• 大切なお札は神棚に

    お正月の初詣や厄払い、お宮参りに七五三など、年の始めや人生の節目に、私たち日本人は神さまに祈ることを忘れません。ライフスタイルは昔に比べて様変わりしましたが、暮らしの中の行事や習慣に祈りの心は息づいています。
    せっかく神社でいただいてきたお札を、壁や棚にそのまま立てかけて置くのではなく、より丁重におまつりすることのできる神棚に納めることで、神さまへの日々の感謝も習慣として行えると私たちは考えました。

  • 伝統は継承する

    見た目の形が変わることで、神さまをおまつりすることがおろそかになってはいけません。現代の住空間に合わせたデザインでも神棚本来の意味を保ち続け、それを新しい伝統として次の世代に継承していくべきだと私たちは考えます。神社建築の様式美を引き継ぐ神棚の考え方はそのままに、形を変えて表現する。神宮司神棚舎の神棚がまったく新しい形ながら、穏やかで落ち着いた「神棚らしさ」を合わせ持つ理由です。

  • 暮らしに合わせたデザインを

    神棚を設けたい気持ちがあっても、洋風のインテリアに似合わないため、あきらめている人も多いのではないでしょうか?神宮司神棚舎の神棚はインテリアを選ばないシンプルな形を基本に、限られたスペースに美しく収まるデザインや、壁に掛けて使えるタイプなどが展開されています。また、忙しく日々の暮らしに追われていても、毎日お供えを取り替えやすいよう一体になった神具台など、デザインだけでなく使い勝手の面でも今のライフスタイルに合わせて考えられています。

  • 木曽檜

    秋田杉、青森ヒバとともに日本三大美林として賞讃されてきた木曽檜。柔らかく加工が容易なうえ、狂いが少なく耐久性も高い、世界でも優れた建築素材です。また、時が経つにつれ光沢を増す美しさも兼ね備えています。
    日本最古の木造建築物とされている法隆寺五重塔や、20年に一度の伊勢神宮の式年遷宮(社殿の建替え)にも木曽檜が使われており、社寺建築と関係の深い木材としても知られています。

  • 神代欅

    火山の噴火や大きな地崩れなどにより、およそ1000年以上前から地中に埋没していた倒木のことを神代木といい、神代欅のほかにも、神代杉、神代桂などがあります。埋もれている長い間に地中の成分がゆっくりと浸透し、独特の色合いに変化していきます。黒褐色または緑褐色で、木目が美しく堅いのが特徴です。
    ちなみに1000年前の日本はといえば、ちょうど平安時代中期頃。源氏物語で有名な紫式部もこの時代に生きていました。

組子細工の第一人者による精緻な手仕事

木工

三祀御社の面格子。その精緻なデザインを実現するため多くの職人に声をかけました。しかし返事はすべて「できない」。2ミリ幅の細い木材を上部は3ミリ間隔で、下部は4ミリの間隔で組んでいくことはごく一握りの職人にしかできない高度な技術だったのです。しかも今回は硬質で加工の難しい神代木が、その風合いからデザイナーの強い要望で選ばれています。この面格子が実現できたのはひとえに横田氏の卓越した組子の技によるものです。社寺や城郭など文化財の修復を多く手掛けるかたわら、現代の暮らしの中でも組子の美しさを感じてほしいという氏の想いが新しい神棚の意匠として実現しました。
※神代木とは神代桂や神代欅など何千年も地中に埋没して いた木のことの総称になります。

横田 栄一

栄建具工芸
昭和16年、長野県小諸の江戸指物師の長男として生まれる。16歳で篠ノ井の建具職人に弟子入りし修業を始め、さらに埼玉県浦和で一年半の修業を積み、26歳で長野に戻り篠ノ井で独立。伝統建具の需要が減少する中、卓越した技術で高い評価を得る。家屋の欄間、書院障子から社寺建具の製作、また多くの文化財修復でも知られ、現代のライフスタイルに合わせた組子の応用にも積極的に取り組んでいる。全国建具展示会で、内閣総理大臣賞4回の他受賞多数。昭和63年に「現代の名工」労働大臣表彰、平成11年には「黄綬褒章」を授与された。

伝統的な要素を踏まえた、新しい神棚

日本一の白さも持つ高浜焼

高浜焼は九州、天草の窯元で、自社で天草陶石を採掘する山を持つ珍しい窯元です。柳宗理の白磁土瓶や醤油差しを焼く窯としても知られています。天草陶石は高品質な白磁原料として世界的に有名ですが、高浜焼はその中でも鉄分をほとんど含まない最も白い石だけを選りすぐり、使うことができるため、他に類を見ない純白の磁器を焼くことができます。今回はお米と塩の器として焼締の白磁器を製作していただきました。

高浜焼 寿芳窯

上田陶石合資会社
宝暦12年(1762年)、上田家六代目の上田伝五右衛門武弼が、肥前の陶工山道喜左衛門を招いて釜を築いたのが始まり。伝五右衛門は長崎奉行に製品の良さを認められて、顔料や釉薬の購入の便宜がはかられるほどに。当時の色絵と染付けを用いた染付錦手焼は、オランダへ輸出されていた。明治時代に一時衰退したが、昭和27年陶石の販売を行なっていた上田家の上田陶石合資会社が復興する。

伝統的な要素を踏まえた、新しい神棚

デザイン

「現代の住宅に調和する神棚」を作るにあたってデザイナーが最初にしたことは神道の歴史と作法を調べることでした。
神宮司神棚舎の神棚には屋根がなく、いわゆる宮型ではありません。それは神棚の基礎知識を調べることで屋根が必要かどうかを客観的に判断した結果です。「神棚の本質を守りながら、生活習慣と住空間の変化に合わせて形を再考する。」それが今回のデザインの方法論です。造形は神社建築の様式の一部をクローズアップして再構築する手法をとり、「神棚」としての神聖さが損なわれないよう細心の注意が払われました。

酒井 俊彦

昭和39年高知県生まれ。東京造形大学卒。コーゾーデザインスタジオにて佐藤康三氏に師事。平成4年サカイデザインアソシエイツ設立。大手メーカーの家電製品、携帯電話等のデザインを手掛ける傍ら、企業向けデザインワークショップや「おいしいキッチンプロジェクト」などのデザインディレクションも行う。緻密なコンセプトワークに裏打ちされた造形力に定評がある。グッドデザイン賞、red dot award等受賞。 www.sakaidesign.com